親子でできる家庭学習法
ロールプレイングを家庭学習に取り入れてみる
電話相談や父母懇談会で、「どうやって勉強させたらよいか」という質問をよく受けるのですが、
「ほめることもたいせつだし、お母さんがお子さんに勉強を教えることも必要だけれども、それよりも、ときどきお母さんが聞き役になってほしい。
お母さんが生徒になって、子どもが先生になるときをつくってほしい」と答えています。
たとえば、二年生の算数を見ても「お母さん、これわからないなあ。○○ちゃん、教えて」と言う余裕をもってほしいのです。
子どもは「お母さん、こんな問題もわからないの。これはね……、わかった?」と言いながら教えてくれます。
子どもはお母さんに教えることによって、ふだんと逆の立場に立つことができるわけです。
低学年だとまだ難しいのですが、四年生くらいになると、塾でも子どもを相手にこれと同じことをやっています。
いま話題になっていることなど、「ぼくは知らないから、教えてくれる?」と言うと、子どもは「先生、そんなことも知らないの?」と言いながら、得意になって一生懸命しゃべります。
これを、勉強にも活用できないかと考えています。
ふつう家で親が子どもに教える場合、親のほうが一方的に教えるだけという図式が多いと思います。
すこし立場を変えて「お母さんもわからないなあ。今度いっしょに調べてみようか」と持ちかけたらどうでしょうか。
そうすれば、「またお母さんがうるさいこと言ってる」という取られ方をしなくなるのではないか、と家での接し方の例としてアドバイスをしています。
いまのお話は専門用語でロールプレイング(role playing/体験的学習法、役割演技法・以下RPと記す)と言いますが、不適応を起こした子どもの治療法としてよく行なわれています。
最近私のところに相談に来たお子さんは、小学校高学年の子で、学校に行っていませんでした。
学校に行っても友だちとどうつき合っていいかわからない、友だちに何か言われたときにどう答えればいいかわからないというのです。
そういった場面をRPで実際に演技させます。
相手や自分のふるまいをそのまま演じたり、立場を逆にして何度か練習すると、相手の気持ちがわかるようになり、自分でどう答えればいいかがわかってきます。
私が治療した中には、気分が落ち込んでうつ状態になり、自分はだめな人間だと思い込んでいるビジネスマンがいました。
趣味や得意なものを聞き出したところ、むかし、水泳をやっていて、ある程度自信があるということがわかりました。
そこで、私が水泳教室の生徒になって、その人から水泳を教えてもらうという設定で演技してみることにしました。
つまり、私が「こわくてできない」「私はだめだ」などと、その人のふるまいを演じてみせるわけです。
すると、「そこのところはこうすればいい」「そんなふうに物事を考えるから、やる気がなくなるんだ」と、そのビジネスマンが私に言ってきます。
その言葉は、じつは私がその人に伝えたかったことなんですね。
それを自分で見つけ出すことによって、ほんとうにやる気も出てきますし、気分も晴れるわけなのです。
ロールプレイングなら具体的な手がからを得られる
役割を演じることは、学習場面でも同じことが言えます。
具体的にこうすればよいという手がかりを整理することができるのです。
「子どもがお母さんに勉強を教える」ことによって、具体的な学習の手がかりをもつことができるようになります。
これがRPの一つのキーポイントだと言えるでしょう。
ロールプレイングでリハーサルをすることができる
もう一つのキーポイントは、役割を演じることによって、心理学で言う「リハーサル」をすることができることです。
具体的にこうすればいいとわかっていても、実際にできない子は数多くいます。
こういった子どもに、「リハーサル」はひじょうに重要です。
ふつう、算数の問題を解くときは、いきなり式を答案用紙に書くのではなく、いったん頭の中で問題や答えを整理してから書いています。
それは、頭の中で一回リハーサルしているのと同じことになります。
このことは、考えをまとめ上げるプロセスとして、たいへん重要です。
つまり、このリハーサルのできる子が「わかっている子」とも言えるわけで、逆に言えば、わかるためにはリハーサルが必要だということになります。
人に何かを教えることは、リハーサルすることにつながります。
「お母さん、こうすればいいよ」と教えながら、子どもは頭の中で教える内容をリハーサル、つまり自分の頭の中の考えを整理し、言語化しているわけです。
このことが、学習を促進することは言うまでもありません。
ですから、「わかっているけど、うまく表現することができない」といった子どもたちには、RPはひじょうに有効な方法だと言えるでしょう。
ロールプレイングを上手に利用した学習法とは?
生活体験などもまさにRPです。
算数の例でいうと、五年生になると割合の問題で「100円の10パーセント引きはいくらか」というのを勉強します。
そんなとき新聞のチラシを見ながら「一万円の30パーセント引きって、いくらになるかしら」とお母さんが子どもに尋ねるというのも一つの手ではないでしょうか。
子どもがお母さんに教えることで、リハーサルをすることになります。
そのあとでたいせつなのは「一万円の30パーセント引きはいくらですか」という問題として、もう一度ノートにやらせることです。
つまり、実際の問題として理解することが必要なのです。
そうすると、RPはリハーサルの効果をもたらして、その後の学習に役立つことになります。
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