思春期と児童期の特徴
いままで九歳から十歳の頃は、もっとも精神状態が安定している時代と言われてきました。
いわゆる児童期の後半です。
この時代の子ども達は、遊びに夢中になり、自分の能力を一生懸命証明しようと、駆け足に、山登りに、プラモデル作りに夢中になっていました。
そしてそれを作れると興奮して喜びを身体全体で発散していました。
もちろんこの時代の子どもに悩みがないわけではありません。
傷つき悲しい思いをすることもあります。
しかしこの年代の子ども達は「いま」に生きている子ども達なのです。
彼らはそんなに時間的見通しを長く持っているというわけにはいきません。
悩んでも何日かたつとケロッと忘れています。
「お母さんなんか一生許さないから」
などと母親に抗議している子どもが、次の日ケロッと母親に甘えてきます。
「一生恨む」などと言った言葉はすぐに忘れてしまいます。
しかしこれが思春期の子ども達になってくると、そうはいきません。
下手をすると一生忘れることなく親への批判や抗議を続けることもあります。
児童期の子ども達の心の世界は「いま」にあります。
過去でも未来でもなく「いま現在」を生きているのです。
しかし思春期になると、子ども達は過去や未来に想いを馳せることができるようになるのです。
時間軸が拡大します。
同じ失敗でも、いまだけの失敗ではなく一生続く失敗と考えたりします。
部分的自分から全体としての自分へ
児童期の子どもも、もちろん自分というものを意識します。
しかしそこで子ども達が考える自分とは、勉強ができる自分とか、運動の上手な自分とか、給のうまい自分とか、ある部分の能力に基づいて自分を評価しています。
自分の能力のありようが自分でもあるのです。
「運動がうまいのは」が主語になります。
その能力のあるなしが彼らや彼女達の誇りにもなり劣等感にもなるのです。
彼らの悩みは何々できない自分の能力にあります。
決して自分の存在のあり方そのものに懐疑するということではありません。
すなわち自己評価は、自分の能力評価と関係づけられて考えられているのです。
しかし思春期になると、子ども達は自分の存在のあり方そのものを問題にしてきます。
「できる」「できない」から「良い」「悪い」という価値へ関心が深くなっていきます。
「自分は」が主語になってくることです。
このような自我の目覚めは、思春期の子ども達の第二の特徴と言えましょう。
これは児童期の能力のようなものと異なり、相手との比較の対象が目に見えるものではなくなります。
走る競争で勝つことは事実としてハッキリと理解できます。
それ故児童期の子どもの自己評価は、主観的には揺らぐことがあまりありません。
しかし思春期になると自分というトータルなもので、主観的、観念的なものになっていきます。
思春期の子どもの動揺は、自分についての主観的なものによる動揺です。
大人への絶対的信頼から大人を否定的に見るようになる
思春期の特徴の第三の点は、児童期には親を絶対的なものと見ていたその見方が180度変わり、否定的に見るようになってきます。
児童期には親の力を尊敬していた子どもも思春期になり大人の力もそれほどでないと知るようになると、自分の力を誇示するために必要以上に大人に批判的になります。
児童期の子どもにとっては大人の能力はすばらしいものに見えます。
走ってもボールを投げても子どもはとてもかないません。
何を聞いても答えてくれます。
家族もちゃんと守ってくれます。
こういう大人を子どもは尊敬します。
しかし、思春期になり子どもの身体も発育してくると、これらの能力の差はさほどのものではないということに気がつきます。
いままでの保護してほしいという考えから自分でもできるという親離れの最初の考えが芽生えてきます。
この親からの自立はかなりの力仕事になります。
子どもの心には自立したいという気持ちとまだ保護されていたいという気持ちの動揺が大きくなります。
特に親の方が子どもの自立の気持ちに気づかないと、
子どもはいつまでも自分が子ども扱いされていると感じて、強引に親から自立しようと必要以上に自分を一人前だと強調します。
いままで素直だった子どもが親が何か言うとことごとく反抗したり無視したりします。
一般には第二次反抗期と言われる現象です。
これは基本的には主導権争いの形を取ることが多いようです。
自分の意見を押し通して相手を従わせようというのがこの争いの基本にあります。
これは親が勝っても負けても、子どもの成長には間題を残します。
主導権争いを子どもが取るときには、親はできるだけ子どもと上手に妥協することが必要です。
この時期の子どもは「すべてか無か」という考えをしがちです。
100点でなければ0点でいいと考えるのです。
人生にはお互いが満足し合うためにはゆずり合いが必要だということを教えるのです。
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