「勇気」を育てておくこと
子どもは無力なものとして生まれてきます。圧倒的な能力のなさが、劣等感を生みます。何でもできる大人に比べて、何もできない自分に不安や心配がつきまといます。
不安を体験すると、子どもは自分からいろいろなものに挑戦するよりは、大人の力によって守られていたいと感じるようになります。
すなわち子どもは、ほっておけば依存的になります。
一方新しい体験をしたい、大人のように何でもできるようになりたいという願望もあります。
しかし失敗が怖いのです。
そのために本来子どもの持つ能動性が制限され、消極的になるのです。
子どもに世のなかと関わることをおそれない、積極的な勇気を育てておくことが大切なのです。
それでは勇気とは何でしょうか。
言葉の語源は「気が湧き出す」ということのようです。
すなわち命のエネルギーがあふれ出すことを勇気と言うようです。
生き生きと力強く出来事に挑戦する力が勇気でしょうか。
このように勇気は与えられるわけではなく、湧き出す力を引き出すことが、勇気づけと言われるものです。
子どもが勇気を持つためには、湧き出す力を邪魔するものを、とり除くことが大切なのです。
この邪魔なものが、脅えや不安なのです。
不安は自分に自信を持てないときに起きてきます。
失敗して恥をかくのではないかという気持ちは、脅えを生み出します。
このような不安や脅えを与えないような状況を作ることが、勇気ある子どもに育てるために必要なことなのです。
友彦(仮名)君は中学二年生です。
テニスが上手な子どもでした。
地区大会でどんどん勝ち上がり決勝戦まで進みました。
でも、相手は県大会に出ている大変強い選手です。
どう考えでも勝てる相手ではないのです。
学校では先生を始め、友達から日曜日の決勝戦をみんなで応援に行くからぜひがんばって勝ってねと言われています。
友彦君は全く勝てる自信がありません。
決勝戦の前日お母さんのところにやってきました。
「どう考えたって勝てっこない相手だよ。
それどころか一点も取れないかもしれない。
そうなったら先生やみんなは何と思うかわからない。
笑われるよ。
明日の試合は棄権したいな」
とお母さんに言いました。
息子がひどく落ち込んでいる姿を見てお母さんは言いました。
「うん、おまえが勝てないと思って悩んでいる気持ちはよくわかるよ。
でも棄権したらもっとみんなががっかりしないかな。
やるだけやってそれで負けても何も恥ずかしいことではないよ。
それよりやらないで逃げ出してしまう方がもっと恥ずかしいよ。
勝とうと思うのではなく自分のベストを尽くしてくれるとお母さんはうれしいな」。
息子が言いました。
「そうだね。挑戦だね。挑戦を逃げてはいけないね。
がんばって勝たなければダメだと言うかと思っていたけど、そうじゃなかった。
ありがとう」。
友彦君は次の日の決勝戦に参加しました。
結果はやはり大敗でした。
しかし友彦君は胸を張って家に帰ってきました。
「やるだけやったからさっぱりした」
と元気でした。
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