子どもの成長には「適度な失望」が必要
子どもに、
『お父さん(お母さん)はすごいんだね』といわれたら、『そうだよ』と素直に喜ぶようにしましょう。
なぜなら、子どもは親を「理想的な存在」ととらえることで、「いつか自分もあんなふうになりたい」というエネルギーがわき、それが子どもの成長を導くからです。
はっきりと口にはしなくても、親を頼り、あこがれを抱く時期が子どもにはあるものです。
このような世界を大切にすることで、子どもの世界は広がっていきます。
そうはいっても、世の中に完璧な人間はいません。
それは親だって同じです。
いくらやさしくて思いやりのある親でいようと思っても、かっと腹を立てることだってあるでしょうし、疲れて投げやりになることもあるでしょう。
そのような親の一面を知ることも、また教育なのです。
イギリスの精神分析医ウイニコットが、「ほどよい母親」という言葉を用いて「母親としての機能」について説明しています。
ほどよい母親というのは、完璧ではなく、かといって欠点ばかりでもない、ほどほどに欠点があるお母さんという意味です。
完璧なお母さんなんていません。
いや、なんにでも手が行き届いていて、理屈が通っている完璧なお母さんなど、子どもにとっては、困る存在なのです。
子どもは、多少の欠点がある、ほどよい母親と接することで、依存しながら徐々に失望し、「自分の足で歩いていくことが大切なんだ」と理解するようになるのです。
いくら親がいつまでも子どもと伸よくしていたいと考えても、思春期のころになれば、子どもは親の欠点を見つけて失望し、親をやたらと低く評価したり、反発したりするようになってくるものです。
それはけっして、母親の育て方が悪かったせいではありません。
そのような態度をとることで、子どもは意識せずに親離れしていけるようになるのです。
また、子どもの成長にとって親に対する失望が必要なように、親にも子どもへの思い込みを捨てていく作業が必要です。
子どもが子どもの思い込みで親を評価するのと同じように、親のほうも子どもに対していろいろな思い込みをしています。
子どもが新聞広告の裏側に、なにげなく人の顔らしきものを描いた。
その顔を指して「お母さん」とつぶやいた。
それをみたら「この子は絵の才能があるんじゃないかしら」などと思ってみたりするものです。
逆に、その期待に子どもがこたえられないと、「この子はダメなんじゃないかしら」と思うこともあるでしょう。
やっかいなことに、子どものことを思えば思うほど、このような思い込みは強くなり、気になる行動にばかり目がいってしまうようになります。
しかし、子どもは子どもなりに一生懸命生きているのです。
いい面が出ることもあれば、よくない面が出ることだってあるでしょう。
そんなとき、子どもの一部分だけをみて決めつけすぎると、子どもは苦しくなってしまいます。
何より「この子はダメなんじゃないかしら」と思い込んでいる親自身が、つらくなってしまいます。
子どもの力を生かし、そしてお母さんたちの心が元気で明るくあるためには、「親の思い込み」にとらわれない自由な目で、長所も短所もあるひとりの人間として子どもを見つめていくことが大切です。
そのためには、「私はこの子の母親だから」と、子育てのすべてを自分で背負ってしまわずに、夫や友人、あるいは専門家などと話し合うことが役に立ちます。
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