思春期の子供に対する親の接し方
この難しい年頃の子どもとどう付き合ったらいいでしょうか。
嵐のようなこの時代を、それほど大きな怪我をせずに無事に通過してほしいとどんな親でも願っています。
しかし現実には思春期のときこそ、親との関係で傷つき問題を悪化させているケースを多く見かけます。
親はどのようにこの子ども達と付き合っていったらいいのでしょうか。
子育てが終わったということを知ろう
子育てすなわち親が子どもの性格形成に影響を与えることのできる年齢は小学校時代までです。
年齢で言えば十二歳まででしょう。
もちろん個人差がありますが子どもが九、十歳くらいになったらそろそろ子育ては終わりだと考えて良いのではないでしょうか。
さて子育てが終われば子どもに対して親は何もしないで良いのでしょうか。
いえ、違います。
子ども達の基本的な性格を変えることは難しいでしょうけれども、
そのできあがった性格を上手に使い、人間関係を作り上げていくやり方を教えていく必要があるのです。
すなわち子ども達は対人関係のスキル(方法)を学ぶのです。
この方法は仲間のなかでも学ぶでしょうが、やはり社会を代表している親が教える必要があると思います。
具体的には良い関係を親と作れることが社会のなかでの人間関係をよくする原点になるのです。
問題はこの教えるということです。
一般的には子どもの悪いことを指摘したり、怒ったりして大人の言うことを聞かせようとします。
しかしこれでは子どもは自発的に自分から大人の社会のルールを守るようにはなりません。
強制や不安、脅しで一時的に子どもを大人に従わせても、それは子どもを納得させたことではありません。
長期的には子どもに力がついたときに、子どもは大人の言うことを聞かなくなります。
かえって密かなる反抗を心のなかに育てる結果になります。
親はまず一歩譲って子どもの意見を受け入れてみることです。
子どもは親の了解で行動している限りそれほど過激な問題行動を取ることはありません。
むしろ子どもの行動を親が認めず拒否していると、子どもは反動で歯止めがなく問題行動に走っていってしまいます。
真美(仮名)さんは高校一年生です。
私立の女子校に通っていたのですが、通学途中に知り合った高校三年生と付き合い出しました。
バイクの好きな子でよく乗せてもらっていました。
だんだん帰りが遅くなってきました。
服装も派手になってきました。
ある日髪を染めたいと言い出したのです。
ついにお父さんが怒り出しました。
「今のおまえは不良だ。勝手なことばかりして」
と言って殴ったのです。
彼女は「クラスの子でも髪を染めている子が何人もいる」と主張したけれども、お父さんは怒るのみです。
そしてたたいたのです。
しばらくして彼女は黙って髪を染めてきました。
それだけでなく外泊もするようになりました。
「不良というのなら本当の不良になってやる」というのが彼女の気持ちでした。
一年の終わりにはたばこを吸ったということで学校を退学させられました。
自分でもオートバイの免許を取り、暴走族に入っていってしまいました。
子どもは自分自身が嫌いだということを知る
最近の子どもはどうも自分をあまり肯定的に見ていないようです。
私が
「自分は好きか」という自己肯定感を聞く質問をすると、多くの子どもは自分が嫌いだと答えます。
これは大人から見れば不思議な現象です。
いまの子どもは物にも愛情にも恵まれています。
ほしい物はほとんど買ってもらってふんだんに手をかけてもらっています。
それにも関わらず自己肯定感はあまり育っていないのです。
なぜでしょうか。
私の意見では、子どもから自己肯定感や自信を奪う強力なばい菌が、いまの子ども達の世界を大きくゆがめているのです。
子どもは親の期待に押しつぶされているところがあります。
あるお母さんがカウンセリングに相談にいったときの話です。
「家の子どもがもう少し……であったら」
とか
「成績があと何点上がってくれたら」
というように子どもへの期待を「……たら」という形で説明していました。
まさにこの「……たら」が、子どもの自信をくじいているもっとも大きな要因だと考えています。
親は当然ながら子どもにこうあってほしいと期待を持ちます。
そしてそのような期待を実現させるために子どもの実際の姿を変えようとします。
言葉を換えればそれは
「子どもへの親の期待−子どもの現実の姿」
という引き算で子どもを育てようとします。
子どもの悪いところを注意してあげることが子どもをよくするのだという考えが当然のようにあります。
この親の理想から出ている言葉の典型的なものが二つあります。
「早くしなさい」
これは親子のなかで交わされる言葉かけのもっとも多いものです。
「遅刻するから早くしなさい」、
「早くお風呂に入らないとぬるくなるよ」、
「ご飯早く食べて。お母さんだって次にしなければならないことがあるんだから」
など、早くという言葉はよく使われます。
このように言われると子どもは初めは早くしなければと思うようです。
しかし繰り返し繰り返し早くしなさいと言われ続けると子どもは
「お母さんがこんなに言っても早くできない僕はダメな人間だ。仕方ない。のろまで生きていくしかしょうがない」
と否定的な自己評価を持つようになります。
これを否定的自己同一性と呼んでいますが、
このように自分からマイナスで良いのだと決心してしまうと子どもはどんどん無気力になっていってしまいます。
しかし子どもにいろいろなことをてきぱきと早くやらせることは必要です。
そのためには親はどのような対応をしたらいいのでしょう。
いろいろな方法があると思います。
これから述べる方法はそのなかの一つです。
「早くやりなさい」
ではなく
「早くやれたね」
と言ってほしいとお願いしています。
些細な違いに見えるかも知れません。
しかしこれはそうではありません。
なぜなら「早くやれたね」という一言葉かけは、すでに子どもが早くやれたことを親が見つけてそれを言ってあげることです。
子どもにとってみれば
「ああそうか。僕も早くやることができたんだな」
と自分ができたことへ目を向けるようになります。
これは子どもにとっては大きな自信になります。
一度でも早くやれたということは決して能力として早くやれないわけではないということに子どもは気がつきます。
自分に自信を持つ、すなわち自分を肯定することができるようになります。
「ダメです。いけません」
これも親が子どもに使う言葉かけとしては多いものです。
繰り返し、「ダメです」と怒られたり注意されたりしていると、子どもは意欲を失い、他人の指示がなければ行動しない人間になっていく可能性が高くなります。
人の指示で行動するということは、仮に間違った行動でも、それは指示した人に責任があることで自分にはないといういいわけをいつも持っているということでもあるのです。
また、あまりダメだと言われ続けると何をやっていいかわからなくなり消極的になってしまいます。
一般に子どもへの声かけで「……してはいけない」のような、禁止を伴うメッセージは子どもをダメにすることが多いと考えられます。
これは子どもの積極性を結果として奪ってしまうからです。
禁止ではなく、「……したら」という肯定的な言い方を子どもにするべきではないかと提案しています。
子どもの問題の行動を禁止するにもただ「いけません」と言うだけではなく「そうじゃなくてこうしたら」と新たな提案をしなければいけないと考えます。
子どもは、やり方は一つではなくいろいろなものがあるということを、大人の提案を通して学ぶことができるのです。
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