受験ノイローゼ
大きすぎる期待や失敗の許されない期待は、
子供の精神的負担を増し、危機に追い込む
「親の期待が重荷だった」
中学浪人一年目で目指す私立K高校に無事入学した昇(仮名)は、受験ノイローゼで苦しんだ中学三年の受験期をふりかえって、こういいます。
親の期待過剰や過干渉は禁物
どちらかといえば優等生タイプで、親に口答えなどしたことのない昇が、家族のちょっとした笑い声にも神経をとがらせ、母親や妹に当たりちらすようになったのは、中学三年の二学期の半ばからです。
一日おきに通う進学塾の時間を含めると、家庭での学習時間が一日五〜六時間、日曜日は都心の有名進学スクールに通うというのが、三年生になってからの昇の生活です。
学校の部活動は、両親の意向で一年生のときからやっていません。
小学校の卒業期に某有名私立中学の入試に失敗したことから、中学生になってからの昇は、国立大学合格者を多数出しているK高校の入試に照準を合わせた生活を、両親によって強いられたのです。
他の生徒たちが部活動に参加したり、のんびりと余暇を過ごしている間に、一目数時間もの猛勉強をしていたのですから、テストの成績はいつも学年で一、二番でした。
だが、夏休みを過ぎたあたりから成績がじょじょに下降しはじめ、十一月初旬におこなわれた業者テストでは、学年で九番となってしまいました。
急にふさぎ込んだり、家族に当たりちらすような昇の変化はこのあたりからです。
が、いらいらしてなんとなく落ち着かず、
「自信がない」「気持ちが集中しない」「眠れない」
などと母親に訴えるようになったのは、それより一カ月ほどまえあたりからでした。
母親は、昇には家の仕事はいっさいさせず、テレビも本人はもちろん、五つも年下の妹にも、「お兄ちゃんの勉強のじゃまになるから」といって、あまり見せません。
二学期に入ると、長い間続けてきた着物着付け教室の講師としての仕事もやめて、子どもの受験に備えました。
母親が、学校の担任の先生や塾の先生を頻繁に訪ねるようになり、息子の勉強の仕方にまでなにかと口出しするようになったのは、このころからです。
三学期に入ると、昇のいらいらはますますひどくなり、
「考えがまとまらない」
といっては大声で怒鳴ったりするばかりでなく、頭痛、耳鳴り、めまい、食欲不振、不眠など、さまざまなからだの不調を訴えるようになりました。
医師は、とくに客観的な体の異常は認められず、心因的なものだといいます。
いわゆる受験ノイローゼです。
昇のノイローゼは、受験当日、頂点に達し、汗をひどくかき、脈拍が速くなり、テスト中に吐くといった状態で、結果はもちろん不合格となりました。
親の態度で子どもの不安を和らげることが出来る
親がわが子に期待するのは当然ですが、大きすぎる期待や、失敗の許されないような期待は、子どもの精神的な負担を大きくし、子どもを危機に追い込みます。
自分だけのことなら、たとえ失敗してもあきらめもつきますが、親やまわりの人たちの期待が大きすぎると、絶対失敗は許されないという絶体絶命の境地に追い込まれてしまうのです。
まわりの人たちの気の使いすぎも、子どもの精神的負担を大きくします。
高校受験というのは、ある意味で人生最初の試練ですから家族がそれなりにいろいろ配慮してあげることは必要なことです。
だが、度がすぎると、かえって逆効果になる場合が多いようです。
受験期の子どもをもつ親の心がまえとして大切なことは、テレビやステレオの音量を下げるとか、やたらと仕事をいいつけないなど、勉強に専念できる環境をつくってやることと同時に、
子どもの不安、動揺をいかに和らげてやるかという心遣いです。
そのためには、ふだんと変わらぬ家庭の雰囲気と、親の泰然自若とした態度がなによりも肝心です。
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