四つの能力が子供をたくましくする
子ども達と話をしているとよく気がつくことがあります。
子ども達に「生きていく力」が欠けているのではないかということです。
これは、問題を起こす子ども達だけではなく、いまの子ども全般に共通するものではないでしょうか。
子ども達が成人する頃、大変難しい時代になっています。
つぶれるはずのない大銀行や大会社が倒産しています。
いままでの経験では予測のつかない社会に突入したのです。
子ども達が大人になる二十年後を予測することは大変困難です。
二十年後の子ども達を、学歴や親の残した財産などで安全に保障してあげることができるのでしょうか?。
私はこのような不透明な時代には、
どんな状況になっても、自分の力で生きていける子どもに、たくましく育てていくことが大切ではないかと考えます。
そのようなたくましい子に育てるには、親はどのように子育てをしたらいいのでしょうか。
私は以下の四つの力を子育てを通して、子ども達につけておく必要があると感じました。
尊敬する能力
「尊敬」とは、自分以外の人を自分と同じように大切な人として敬うことです。
このような、人を尊敬できる子どもになるには、いくつかの条件があります。
最初の条件は、自分のことを好きになること(自己肯定感)です。
子どもはまず自分のことを好きになる必要があります。
いまの子どもは案外自分のことが好きではありません。
それは周りの大人が(親を含めて)ありのままの子どもを認めて、受け入れることが少ないことに理由があるようです。
親はつい理想の我が子と現実の我が子を引き算して、子どもの足らないところ(欠点)を指摘しがちになります。
親は子どもに
「あそこがダメ。ここもなおさなければ。がんばらなければ」
などと理想の我が子の立場から声をかけてしまいます。
そうされると子どもはどんな気持ちになるでしょうか。
「あそこもなおさなければダメか。結局何やってもダメなんだ、自分は」
と考え、自分に自信を失っていきます。そして自分を嫌いになります。
親はできるだけありのままの子どもを認めてあげてください。
子どもの行うあたり前のことに感謝してください。
不登校の子どもを持つ親から見れば、子どもが朝元気に学校に行くだけで、子どもに感謝したくなります。
試験で少しぐらい悪い点を取ってきても、決して子どもを叱る気にはならないはずです。
風邪を引いて寝込んで、初めて健康のありがたさがわかります。
どうか、元気に精一杯生きている我が子を喜んでください。
そうすれば子どもはこんな自分でも親は喜んでくれるんだと、ありのままの自分に自信を持つことができるのです。
責任をとる能力
次に大切なことは、責任をとる力です。
日本人は責任をとるというときに、会社をやめればいいと考えたり、昔は切腹して責任をとるような、問題が起きている状況から身を引けばいいというような、そういう責任のとり方をしてきました。
そしてそういう責任をとる人に寛大でした。
しかし責任とは本来そういうものではありません。
本来の責任の意味は、自分でできることがあれば、喜んで自分からそれを引き受けようと決心することです。
誰かに責任を転嫁したり、原因をただ追い求めるのではなく、目の前の困難な課題に対して、自分にできることを果たしていくこと。
これが責任をとるということです。
自分に原因があろうとなかろうと、自分が必要とされる出来事が目の前にあるのなら、自分に何ができるかを考え、自分のできることを果たすこと。
それが責任をとるということです。
残念ながらいまの子ども達はあまりこの責任ということを学んでいません。
部屋が散らかっています。
お母さんが子どもに
「部屋を片付けくれるとうれしいんだけど」
と頼んでいました。すると
「部屋散らかしたのは僕じゃないもの。僕、関係ないよ」
と子どもが答えます。
よくある一場面です。
皆さんのお子さんは、このように答えることはありませんか。
「部屋散らかしたのは僕じゃないけど、でも僕手伝って片付けるよ。
だって部屋がきれいだと僕も気持ちがいいもの」
と言ってくれる子どもがいたら、その子はきっと責任ということを教えられている子でしょう。
子どもにもっともっと責任ということをよくわかってほしいものです。
またもっともっと教えなければいけないことでもあると思います。
子どもに責任を教えるには二つの方法があります。
一つは責任を果たさなければ、その結果事実としてどうなるかを体験させるのです。
子ども部屋を散らかしているとしましょう。
「お母さんは部屋がきれいになっている方が気持ちいいけど、掃除しない?」
と聞いてみるのです。
子どもが「うん、する」と言ったら一緒に掃除の手助けをしてあげてもいいのです。
反対に、「僕の部屋だからいいの」と言って、散らかしっぱなしにしておくなら、徹底的に散らかさせておくのです。
途中でお母さんが片付けてあげてはいけません。
それは汚くすればお母さんが片付けてくれるということを覚えてしまうからです。
汚くしていれば自分が不自由するということを身をもって体験させるのです。
一、二か月後にはどうしようもなくなって片付けます。
きれいになったところで「やっぱりきれいな部屋はいいね」と言ってあげるのです。
このような経験をした子どもはそれなりに片付けるようになります。
責任を教えるもう一つの方法があります。
それは「いけないものはいけない」とはっきり言うことです。
もちろん感情的に怒ることではなく冷静に言うことが必要です。
特に他人に迷惑のかかることについては断固として「いけない」ということを言わなければいけません。
小学校の一、二年生くらいの子どもが電車のなかを我が物顔にかけずり回っています。
お母さんが数人で話をしています。
子どもの行動に全く無関心です。
老人が電車に乗ってきました。
子どもの一人が老人にぶつかりました。
見かねて私が子どもに注意しました。
初めて気がついたお母さんは子どもに
「おじちゃんが怒っているから静かにしなければダメよ」
と注意しました。
これでは子どもは責任ということを学びません。
私が怒っているからではないのです。
私が怒ろう怒るまいと電車のなかでは静かに人の迷惑にならないようにするというのがルールなのです。
誰かが怒る怒らないは関係ないのです。
皆が協力して生きていくためには、いけないものはいけないものだということをしっかり教える必要があるのです。
社会性を身につける能力
第三に大切なことは、社会性を身につける力です。
よく「皆と仲良く遊ばなければダメよ」と言う親がいます。
社会性ということを考えるとき、皆と仲良く遊べる子が本当に社会性がある子と言えるのでしょうか。
皆と仲良くするということは、大人の私達だってできないことです。
私達大人は皆、社会性がないのでしょうか。
そんなことはありません。
皆と仲良くするということは、結局誰とも仲良くならないということでもあるのです。
八方美人という言葉があります。
皆と仲良くしますが、本当の友達はできません。
社会性がある子とは、仲良くなりたい子に「君と仲良くなりたい」と言えるような子どもです。
自分の言葉で自分の意見を、はっきり表明できる子を、育てなければいけないのです。
日本人は自分の意見を表明せずに、態度や雰囲気で自分の気持ちを伝えようとします。
そしてうまく自分の気持ちを相手がくみ取ってくれないと、相手を気がきかないと言って非難します。
しかしこれは間違っています。
してほしいことがあれば、それを相手にちゃんと言うことが大切なのです。
子育てのなかでも、子どもが自分の意見をしっかりと言えるように訓練する必要があります。
自分の意見を言うには、方法があります。
それは「私は……思う」という言い方が大切だということです。
この言い方を「私メッセージ」と言います。
この言い方は相手に自分の意見を伝える言い方です。
反対に「あなたは……だ」という言い方があります。
これは「あなたメッセージ」と呼ばれる言い方です。
「あなたメッセージ」は相手を評価、判断した言い方になりやすいのです。
結果として、話し合いは対立、争いになります。
意見を表明するにはあまり望ましい言い方ではありません。
たとえばご主人が帰ってきて、あなたの作った料理を
「これはうまいな。料理の上手なお前は偉いな」
と言ったとしたら、あまりうれしい気持ちはしませんね。
やはり
「おいしい料理を作ってくれて、僕はうれしいな」
と言ってくれた方が気持ちよくありませんか?
子ども達に教えなければいけないのは、「私メッセージ」での話し合いです。
これはあくまで自分の意見ですので、それに反対するにしろ、賛成するにしろ、相手の意見もまた意見として開けます。
要するに話し合いが進んでいきます。
生きていく知恵
最後に大切なものは生きていく知恵です。
私達は二つの能力を持っています。
一つは知識であり、もう一つは知恵です。
本を読んだり、2+2=4といったことは知識です。
いまはこの知識が重要視されています。
しかし、これから必要とされるものは知恵ではないでしょうか。
かつては子育てで悩む若い母親が、おばあちゃんに相談するという光景がよく見られました。
「三歳になってもまだ言葉が出ないけど大丈夫かしら」
「男の子は昔から口が遅いんだよ。もう少し様子みたら」
と年寄りに言われて、安心して子育てを続けた母親もたくさんいました。
知恵とは体験を通してしか身につきません。
体験のなかでいろいろ工夫することにより、実際に身につけていくのです。
知恵というのは工夫です。
知恵がないと知識があってもそれを活かすことができません。
学校では知識は教えてくれますが、あまり知恵は教えてくれません。
知恵は家庭で子ども達に教える必要があります。
二十一世紀を生きる子ども達のためには、特に男の子には家事労働の知恵をぜひ教える必要があると思います。
多分これからの時代は男もかなりの部分家事労働をすると思います。
そのときに知恵がないと悲惨だと思います。
また女の子には、できるならば外で働くこと(バイト)をやらせたほうがいいと思います。
これからの女性は、経済的にも男性から自立していくと思います。
働くことの知恵を身につけておく必要があるのです。
子ども達が大人として社会に参加していくのは二〇二〇年頃でしょう。
そのころの日本は様々な面で大変な厳しい環境が予想されています。
学歴や大企業というだけでは安全とは一言えなくなってきます。
しかしこの四つの力を身につけた子どもは困難な状況になればなるほど力を発揮していきます。
子どもの権利条約というものがあります。
この条約は大人と子どもの関係を大きく変えるものです。
いままでは子どもは、大人に保護され守られる対象として考えられてきました。
しかし今後は子どもは大人と対等な権利を持ったパートナーとして理解する必要があります。
子どもには意見表明権が認められています。
否が応でも大人は子どもと新しい関係を作っていかなければならないのです。
すなわちいままでみたいな上下の関係(縦の関係)はもう望めないのです。
対等な関係(横の関係)を親子のなかで作り上げていくことこそ、最も大切な子育てになっていくのです。
私がいままで述べてきた子育てのやり方も基本的には、子どもと親が横の関係に具体的になっていく方法を述べたものです。
二十一世紀を生きる子ども達は、私達のかけがえのないパートナーだというところで、もう一度、いまの親子の関係を見直してみませんか。
そして子ども達に本当の生きる勇気と知恵を教えておけば、たとえ子ども達が大人として生きる時代がどのような時代であろうと仲間とともに幸せに生きていくことができるのではないでしょうか。
お気に入りのブックマーク・RSSに登録 »
関連記事
サイトマップトラックバック(0)
http://yg-away.biz/mt/mt-tb.cgi/475

