自己実現
自分らしくあるために
自己実現という言葉はよく使われますが、元はアメリカの心理学者マズロー(A.H.Maslow)が提唱した用語です。
マズローは人間の動機を、
(1)飢えや渇きをいやしたいという生理的動機、
(2)安全に暮らしたいという動機、
(3)仲間がほしいという所属と愛情の動機、
(4)自尊の動機、
(5)自己実現(self-actualization)の動機、という5つの階層に分けました。
5つ目の自己実現動機は、自分のもつ能力を最高に発揮したい、自分らしく精一杯生きたいという気持ちです。
衣食住が充たされ、仲間に恵まれ自分に自信がもてても、この自己実現の動機が充たされていなければ真に精神的に健康であるとはいえないとマズローは考えていました。
自己実現と似た言葉に個性化の過程というものがあります。
これはスイスの分析心理学者ユングの用語です。
ユングは人間の心は意識と無意識からなり、無意識には個人的無意識と普遍的無意識があるとしました。
普遍的無意識には同じ民族が共通にもっているものや人間が共通にもっている元型があると考えました。
この民族や人間に共通のものと同時に、自分独自のものをもっている自分の内面を意識化し統合させることが、ユングの個性化の過程です。
自己実現と同様に、「自分らしくある」ということが、最大の目的となっています。
日常会話の中で自己実現とか個性化という言葉は、本来の意味とはややずれて用いられることが多いようです。
何か社会的に行動を行うこと、成功することが自己実現と考えられ、目立ってユニークであることが個性化と受けとめられてはいないでしょうか。
本来は「自分らしく」ありたいというのが自己実現動機であり個性化の過程なのですから、皆が同じような到達の理想像をもつというのは最もこれらの用語から離れたことです。
子どもを見る目においても、親、そして保育者自身を見る目においても、一つの理想像にとらわれないようにすることが大事です。
自分らしいとはどういうことか、人とは違う自分のよさとは何か、自分は何をしたいのか、人それぞれでまったく異なった答えが出るはずです。
マズローは全ての人がそのような自己実現欲求、成長への欲求をもっていると考えています。
ユングは個性化の過程を一生をかけてやり遂げることと考えています。
その人なりその子なりの自己実現、個性化の過程に寄り添うのが保育者の仕事といえるでしょう。
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