保育者のアドバイス
長年子どもにかかわる仕事をしている方なら、何度も受ける「よくある相談」というものがあります。
友だちができるだろうか、友だちができればうまく遊べているだろうか、乱暴すぎないか、おとなしすぎていじめられやしないか、食が細い、癖があるなどなど。
ベテランの保育者から
「多くの親が同じことを言う。聞かなくても次に何を言うかわかってしまう」
と聞いたことがあります。
多くの子どもたちの発達の姿を見てきた保育者には、経験からくる見通しと安心感があります。
そのような保育者の
「よくあることよ。大丈夫よ」
という態度は、相談をした親に大きな安心感を与えることでしょう。
ただ、気をつけなければいけないことは、よくあることというのは相談を受ける側にとってであり、親にとっては初めてのことなのです。
「よくある相談」と思うことで我々は、それがどんな相談であるのか耳を傾けて聴くことをやめてしまいます。
しっかりと耳を傾けて聴いた時、「よくある相談」は一つひとつまったく異なった相談となります。
たとえば、「爪を噛む癖がある」という相談に
「よくあることですよ。大丈夫。新しい場所に慣れていないからでしょう。
やりたい遊びが見つかれば、じきになくなりますよ」
と保育者が答えを出していた時には同じように思えた相談も、さらに話を聴く時、
ある親は自分の育児が悪いせいではないかと悩んでいたり、
ある親は肉親の死など大きな出来事があったことを語り出したりします。
ある親は
「その癖を見るといらいらする。主人にも同じ癖がある」
と夫への不満を話し出したり、またある親は保育者の対応が悪いのでうちの子がこんな行動をしていると暗に訴えていたりする場合もあります。
一人ひとりの感じ方、考え方、親と子の性格・組み合わせ、環境、全て違うわけですから、教えてもらうようなつもりで話を聴くならば、多くのことを話してもらえるでしょう。
よくある相談というのは、多くの親を悩ませる子育て期間の大問題でもあります。
その大問題をこの親はどう受けとめ、どう行動してきたのか、この子はどのような発達の姿を見せているのかに耳を傾ける時、それぞれの親子の発達のドラマを聴かせてもらうことができるでしょう。
保育者が答えを出していたのでは聴くことのできなかった一人ひとりの物語です。
話している親も、話しながら多くのことに気づいたり考えが整理されたりします。
よい聴き手がいることは「よくある」困りごとを尊重な成長の糧にしてくれます。
丁寧に聴くことは、保育者自身の価値観も豊かにしてくれるでしょう。
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